ふくしま産業賞 社会課題解決に力

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ふくしま産業賞 社会課題解決に力

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福島民報社の第11回ふくしま経済・産業・ものづくり賞(ふくしま産業賞)の各賞発表を受け、受賞企業・団体の代表者は社員、従業員、家族らと喜びを分かち合った。最高賞・知事賞に輝いたスペースワン(郡山市)はドローンを活用した地域貢献に力を尽くす。福島民報社賞のマザーソリューション(福島市)は育児しやすい環境づくりを目指す。社会が抱える課題に今後も真摯[しんし]に向き合い、解決するために果敢に挑戦していく。■水中ドローンで地域貢献
知事賞のスペースワン(郡山)
「水中と空中で活躍するドローンの『二刀流』で、老朽化するインフラの保守管理や頻発化する災害の課題解決に力を尽くす」。知事賞に輝き、スペースワンの社長の小林康宏さん(48)は言葉に力を込めた。
ドローンと出会ったのは2015(平成27)年1月だった。米国で開かれた世界最大級の科学技術見本市「CES(セス)」を訪れた。手のひらサイズの複数のドローンが音楽に合わせて空中を自在に飛び回っている光景に衝撃を受けた。
「日本で新しいビジネスになる」。直感した小林さんは帰国後すぐにドローンを購入した。都内のドローンスクールで学び、操縦士や講師などの資格を得た。2016年に社長に就任すると、ウェブ制作が主だった社業の柱にドローン販売事業を据えた。
まずはドローンを安全に活用するため、人材育成の重要性に着目。日本UAS産業振興協議会の認定を受け、2016年に東北初のドローンスクールを開校した。これまでに5千人以上の人材を育ててきた。
空中分野では現在、ドローンとパイロットの派遣事業を展開している。テレビや映画の空撮、用地測量、災害調査で実績を重ねてきた。2017年には水中ドローンの事業を開始。ダムや下水道管など、人の目の届きにくい水中のインフラ設備の点検で活躍している。2019年には一般社団法人日本水中ドローン協会を設立。安全な運航に要するライセンスの発行、国や関係機関との知見の共有に取り組んでいる。
「水中ドローン業界の先駆者として、地域のインフラを支え、産業を盛り上げていきたい」。小林さんとスペースワンのチャレンジは続く。■育児しやすい環境つくる
福島民報社賞のマザーソリューション(福島)
始まりはマザーソリューション社長の斎藤祐子さん(43)の体験だった。2012(平成24)年に郡山市で第1子を出産。子育てに奮闘する中、自身の困りごとを解決する子ども用品を手作りしていた。
よだれが服に染みない防水スタイ(よだれかけ)、抱っこひもをウエストバッグのようにしまっておけるカバー…。当時は同様の市販品がなく、ブログに投稿すると、「欲しい」と声が上がったという。当初は無料で提供していたが、販売を勧める意見があり、サイトで販売を始めた。
第2子を授かった後、結婚を機に辞めた仕事を再開したかったが、家族の仕事の都合で断念。福島市に引っ越した後も育児を理由に再就職できず、このまま好きなものづくりを仕事にしようと決意した。以前からオファーを受けていた通販サイト「楽天市場」へ2019年に出店した。
注文数の激増により一人での運営に限界を感じていたところ、自分と同じように働きたくても育児で働けない周囲の母親が業務を手伝ってくれた。恩返しの気持ちと、「子育て中でも働きやすい会社を一緒につくろう」との思いから創業。2022(令和4)年には法人化に踏み込んだ。
子ども用安全帯(ハーネス)は累計販売数が2万5千個を超えるヒット商品に成長した。従業員は会社の運営や商品について活発に意見を出し合っている。子どもの都合に合わせて勤務できる仕組みや、互いを助け合う前向きな雰囲気も生まれている。
斎藤さんは「今後も母親が抱えるストレスを少しずつ減らすことができる商品を作っていきたい」と笑顔を見せた。