福島のニュース
ターゲットはシンガポール―。福島県沖で水揚げされた水産物「常磐もの」を同国に売り込む動きが広がっている。福島相双復興推進機構(官民合同チーム)は同国のオンラインストア運営事業者と連携。浜通りなどの事業者が水産加工品を販売する事業を今月開始する。いわき市の水産加工・販売などの企業でつくる「常磐もの輸出推進協議会」も8日から、現地で商談会に臨む。日本国内での水産物の消費が伸び悩む中、富裕層が多く、日本食の需要が高い同国を起爆剤に東南アジア、世界に販路を広げ、東日本大震災と東京電力福島第1原発事故からの福島県漁業の復興につなげる。
官民合同チームによると、シンガポールは経済が好調で国民の購買意欲も旺盛。国民の約2割に来日経験がある親日国で日本食や日本酒の需要も高い。在シンガポール大使館や日本貿易振興機構(ジェトロ)を通じて県産品の安全性やおいしさ、魅力などに関する正しい情報が国民に浸透しており風評被害が少ない優位性もあるという。インドやヨーロッパからの移住者が多く、販路が確保されれば、世界に広がる可能性を秘めている。
官民合同チームは、県産水産物のおいしさと安全性の発信を目的に国内外で繰り広げてきた「ふくしま常磐大漁市」を同国の有力オンラインストア上で今月から来年2月下旬まで開催する。このイベントを契機に事業者とオンラインストア運営企業が定常取引を行う“自走”を目指す。オンラインストアに出品することで事業者にとっては取引の際の言語の壁や個人で輸出する際のコスト、手続き面での負担なども軽減できるメリットがあるという。
水産庁によると、日本国内での食用魚介類1人当たりの1年間の消費量は2001(平成13)年度の40・2キロをピークに減少傾向にあり、2023(令和5)年度には約半分の21・4キロ(概算値)となった。
相馬市のカネヨ水産は今回の事業に参加し、サバの加工品などを出品する予定。小野芳一社長(43)は「取り組みを契機に海外での販路拡大につなげたい」としている。
常磐もの輸出推進協議会は商談会で、主にヒラメを使った離乳食やメヒカリを売り込む計画。来年1月にはドバイでの商談会に臨む。協議会の小野崎雄一代表(29)は「ジェトロの市場調査で現地のニーズはあることを把握している。取引につながる勝ち筋はあると思う」と話している。
南会津町と町内の4蔵元は11月下旬、シンガポールで町内の日本酒と郷土料理を味わうイベントを開催した。
外務省のホームページによると、日本とシンガポールの両国間には現在、政治的に懸案事項は存在せず良好な関係が継続。広範囲な分野で両国間の交流が活発に行われている。2024年現在で同国の在留邦人は3万2565人で日系企業は4558社に上る。

