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福島県遺族会は300万人を超える国民の尊い命が奪われた太平洋戦争の惨状と平和の尊さを後世に伝えるため、遺族インタビューを収めたDVDを語り部活動に活用する。日本遺族会によると、全国でも珍しい取り組み。遺族の高齢化と減少が進む中、来春から県内の小中学校、高校などを巡り、戦争を知らない世代に遺族の肉声や映像で戦禍を伝え継ぐ。
福島市で7日、終戦80周年記念式を行い、完成したDVDの会員向け上映会を開いた。県内では戦災で6万6304人が犠牲になった。37分間の映像には、父の戦死、戦地からの手紙、食糧難、学童疎開、戦争遺構などについて遺族の生の声が収められている。映像の最後は「戦争は絶対にしてはいけない」「戦争の悲劇を次の世代に伝えていく」とのメッセージで締めくくられている。
遺族の一人、井戸川豊子さん(81)=福島市=へのインタビューでは、母との会話を振り返る場面が収録された。井戸川さんが「どうして、うちに父ちゃんいないの?」と尋ねたことで、母を泣かせてしまったという。父・沢原善次郎さん(享年38)はシベリア抑留で亡くなった。寂しい思いをしていたのは母も同じだった。幼い頃に深く刻まれた戦争の記憶を貴重な証言としてまとめた。
県遺族会の会員は昭和60年代の2万4千人をピークに減少を続け、今年2月時点で4279人。平均年齢は約80歳で、同会は「会員数は毎年1割ずつ減っていく」と推定している。安斎満会長は「戦争を知る世代が減っている。平和の語り部として、戦争の悲惨さや平和の大切さを後世に伝えていく責務がある」と言葉に力を込めた。
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安斎会長は6月に開かれた日本遺族会理事会の役員改選で副会長に選出された。任期2年。

