福島のニュース
在り方の見直しが検討されていた福島、茨城、栃木3県と36市町村などでつくるFIT構想推進協議会は今年度で活動を終了する見通しとなった。関係者によると、事務局を務める県が8日までに活動終了の意向を構成団体に通知した。今年度までの推進期間を今後も延長するかが注目されていた。広域の地域ブランド確立や観光交流の促進、防災体制の整備などの実現に向け、県境を越えた連携の枠組みとして30年以上にわたった活動は、一定の役割を果たしたと判断されたもようだ。別組織での3県連携の継続は模索する。
関係者の話を総合すると、県は8日までに文書でFIT構想推進協議会の活動終了の方針を各市町村や団体に通知。総会の開催に代わる手続きとして書面での意向確認もしており、現時点では承認される見通し。終了の理由に関しては長年にわたる各種プロジェクトを通じた連携促進などで一定の成果を上げたとしている。新たな組織でこれまでの連携の継続を検討する考えも文書の中で提示。オンラインを通じた情報交換などが想定されているという。
協議会に関する主な動きと対象地域は【表】の通り。1987(昭和62)年10月に郡山市で開催された福島、茨城、栃木の3県知事会談で福島県が主導する形で現在のFIT構想の前身となる21世紀FIT構想が誕生。首都機能移転に向けた受け皿づくりの議論の場としての役割を果たしてきた。協議会の枠組みを通して地域資源の掘り起こしや移住促進に向けたシンポジウム開催、観光振興に向けた情報発信や3県周遊の仕組みづくりなどの広域連携事業を展開してきた。近年は新型コロナウイルスの感染拡大などを機に活動は縮小傾向にあったという。
協議会には3県と36市町村、産業団体などが参加。県内からは20市町村が加わっており、3県で最多となっている。■福島県と関東意識に温度差
近年のFIT構想推進協議会を巡っては、東北地方の福島県と関東地方の茨城、栃木両県との間での温度差や広域連携の困難さを指摘する声が相次いでいた。
関係者によると、東日本大震災と東京電力福島第1原発事故の発生などを機に、観光や移住促進などの分野で特に風評払拭が必要な福島県と、茨城、栃木両県で足並みをそろえるのが難しい場面が目立ってきたという。地域間の交流人口拡大の競争が激しくなる中、地域特性の異なる太平洋沿岸から南会津地方までを同じ枠組みにすることへの課題を指摘する声もあった。
首長の一人は「コロナ禍を経て県域を越えて一緒に何かをやろうという機運は一層下がってしまった」と嘆く。他県の意欲も目に見えて衰えていたという。ある構成自治体の幹部職員も「首都圏と東北、どちらを向くかの意識の部分でずれがあったのではないか」との見解を示した。
県南地方の自治体関係者は3県の8市町で構成する「八溝山周辺地域定住自立圏推進協議会」など同じ課題を抱える近隣での連携の利点を強調。「FIT構想推進協にこだわる必要性は希薄になった」と終了への理解を示した。■FIT構想推進協議会を巡る動き▼1987(昭和62)年10月郡山市で福島、茨城、栃木の3県知事会談を開催。福島県から松平勇雄知事(当時)が出席した。福島県が提案した21世紀FIT構想(前FIT構想)を3県で共同で推進することを申し合わせた▼1993(平成5)年9月21世紀FIT構想(前FIT構想)推進指針を策定▼2005年10月新構想(現FIT構想)検討部会設置▼2008年6月新構想(現FIT構想)策定。推進期間を2009年度から2018年度までとした▼2018年8月推進期間を2025(令和7)年度まで延長することを決定
【FIT構想の対象地域】
福島、茨城、栃木3県内の13市16町7村▼福島県(20市町村)いわき市、白河市、須賀川市、鏡石町、天栄村、南会津町、下郷町、西郷村、泉崎村、中島村、矢吹町、棚倉町、矢祭町、塙町、鮫川村、石川町、玉川村、平田村、浅川町、古殿町▼栃木県(10市町)大田原市、矢板市、那須塩原市、さくら市、那須烏山市、益子町、茂木町、市貝町、那須町、那珂川町▼茨城県(6市町)日立市、常陸太田市、高萩市、北茨城市、常陸大宮市、大子町

