老舗喫茶店「珈琲亭いこい」24日閉店 55年の歴史に幕 ファンからは惜しむ声 福島県南相馬市

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老舗喫茶店「珈琲亭いこい」24日閉店 55年の歴史に幕 ファンからは惜しむ声 福島県南相馬市

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福島県南相馬市原町区のJR原ノ町駅前で営まれてきた老舗喫茶店「珈琲亭いこい」は24日で閉店し、55年の歴史に幕を下ろす。「青春時代に通った」「変わらない味が好きだった」…とファンからは惜しむ声が寄せられている。
同店は1970(昭和45)年10月にオープンした。石炭輸送船の航海士だった吉田至巴さん(85)が、長女が産まれたのをきっかけに「家族と一緒に過ごす時間を大切にしたい」と妻のミチ子さん(82)と共に始めた。至巴さんは仙台市のコーヒー卸問屋に通ってコーヒーの知識からメニュー開発、経営のノウハウなどを学び開業した。
駅前の立地の良さに加え、当時はまだ珍しかったスパゲティやピザなどの料理が好評で、店は繁盛した。手狭になったため開店から5年ほどで、隣の店舗に移転した。レンガ造り風の店内は半世紀の間、ほぼ変わらない。落ち着いた雰囲気で、地元の住民や駅を利用する高校生、ビジネスマンら誰からも、店名通り〝いこい〟の場として愛された。
東京電力福島第1原発事故直後、1カ月休んだが、それ以外は定休日以外は休まず、店を開けてきた。「時間はしっかり守る」という至巴さんの航海士時代からの信条を貫いてきた。
しかし、高齢に伴い至巴さんが体調を崩し今年11月に入院。ミチ子さんと従業員で続けてきたが、経営を続けるのが困難になり、店じまいを決めた。
店内には思い出を寄せるノートが置かれている。「50年通い続けてきた。さみしい」「高校生のころから友人、家族と一緒に来た大切な場所」「すてきな時間をありがとう」とのメッセージが記されている。
ミチ子さんは「大勢のお客さんに支えられ続けることができた。閉店は残念だが、やり遂げたという思いもある」と語り、客を迎えている。(相双版)