福島のニュース
開業や役職就任の祝い花の「ミスマッチ」への問題意識が高まる中、福島市の生花店・花の店サトウは10日、受取人の思いに沿った花の贈り物ができるサービスを始めた。複数の贈り主の予算を取りまとめ、受取人の要望に応じて花の種類の指定や定期配送、福祉施設への寄付など、さまざまな選択ができるようにする仕組みで、地方の生花店の取り組みとしては珍しいという。置き場や管理に困るなど祝い花の課題は全国的にあるとされる。日本有数の切り花消費地の福島市から、持続可能な花贈り文化の定着を目指す。
「置き場が足りない」「店の雰囲気に合わない花が届いた」…。花の店サトウで社長を務める佐藤純男さん(48)は祝い花を届ける中で受取人の本音を聞いてきた。数時間の祝賀会で飾り、終了後に「持ち帰ってほしい」と頼まれたことも。「もったいない」との思いを抱きながらも処分するか社員で分け合ったという。社会的にさまざまな分野での「ロス」削減の機運が高まる中、業界内からも対策の必要性を指摘する声が上がっている。
一方、受け取る側からは、場が華やぎ癒やしを与えてくれるとして、花を贈る文化を前向きに捉える声を数多く聞いた。祝い花として主流のコチョウランだけでなく、さまざまな選択肢を増やそうと考えた。
新たなサービスの仕組みは【図】の通り。複数の贈り主からの申し込みを経て、全体の予算を把握。受取人の要望を踏まえ、花の種類を変えたり、時期をずらして定期的に届けたりするなど好みや置き場所、管理といったそれぞれの事情に寄り添った贈り方を提案する。来訪者へのプレゼントブーケなどにも対応可能だ。受取人が置き場や手入れに困る場合は「幸せのお裾分け」と称し福祉施設などに花を寄付する。
今年春ごろに実験的に始めた。10月に福島市に開店した「お菓子工房
森のうさぎさん」のお祝いには4人の予算で、ウサギをかたどったオリジナルの祝い花を届けた。工房の店主井間飛鳥さん(40)は「一つの花からたくさんの思いを頂けた。お客さまからも好評だった」と感謝する。
国内の花[か]卉[き]関連団体でつくる全国花みどり協会(東京都)によると、地方の事業者では珍しいという。県花き振興協議会長の橋本栄市さん(57)は「物価高で花を買う余裕がないとの声を聞く。従来の文化を大切にしつつ、多くの人が花に触れる機会になるのではないか」と期待する。
佐藤さんは10日、福島商工会議所主催の発表会でサービス内容を説明した。贈り主側も、喜ぶ花をどう選ぶかなど「ミスマッチ」への不安を持っていると明かし、「贈る側と受ける側の双方が負担に感じれば、別の贈り物に置き換わってしまう」と祝い花文化が消え去ることへの危機感を訴えた。昨年の総務省家計調査によると、福島市は1世帯(2人以上)当たりの切り花支出額が全国1位の年間1万5786円を誇る。「『本当に喜ばれる花贈り』を福島から発信したい」と意気込んでいる。■贈り主は全国から受け付け
取りまとめサービスの受取人の対象地域は県北地方とする。贈り主側は全国から申し込みを受け付ける。問い合わせは花の店サトウへ。

