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福島県警本部は11日、いわき中央署が捜査した住居侵入、窃盗容疑事件で、無関係だったいわき市の男性2人に対し捜索差し押さえをし、携帯電話を押収し同署に任意同行していたと発表した。窃盗事件ではないことが分かり被害届が取り下げられていたにもかかわらず、捜査員の間で情報が共有されずに捜査が続けられていた。県警は不適切な捜査と認め、2人に謝罪した。識者は「明らかな人権侵害であり、プライバシーや財産権の侵害にも当たる」と指摘している。
県警本部によると、いわき市の70代男性が1日、自宅から財布などが入ったバッグが外出中に盗まれたと同署に被害届を出した。同署が捜査を進めていた5日、男性は「別の場所にバッグを置き忘れていた」と同署に連絡し、窃盗被害ではないとして被害届を取り下げた。
男性の電話を受けた同署刑事1課の捜査員が課長ら上司に報告しなかった。この情報が共有されなかったため捜査が続行。70代男性が留守時に業務で男性宅を訪れていた50代男性と20代男性が疑わしいとして8日、裁判所に捜索差し押さえ令状を請求し許可状を受けた。翌9日午前7時ごろから男性2人のそれぞれの自宅敷地内を捜索し、50代男性の携帯電話1台を押収した。
男性2人を同署に任意同行したが、「心当たりがない」と容疑を完全否定。70代男性に連絡したところ、既に被害届を取り下げていたことが判明した。男性2人は9日午前7時ごろから同8時40分ごろまで、捜査のため自由を制限された。
県警本部は、男性2人が捜査線上に浮上した具体的な嫌疑や経緯を明らかにしていない。許可状を発布した裁判所と裁判官名についても、いわき中央署内の連絡ミスが原因だとして公表していない。福島地裁は福島民報社の取材に対し、いわき簡裁の裁判官が許可状を発布したと明らかにした。
県警は再発防止に向け、被害届の管理に関する指導を徹底する方針。「県民のための警察である意識を改めて浸透させる。適切な業務の推進を図り、再発防止に努めたい」(県警本部捜査3課)としている。■連絡体制徹底再発防止策を
人権問題に詳しい弁護士
いわき中央署の不適切な捜査に関し、人権問題に詳しい穂積法律事務所(白河市)の穂積学弁護士は「人権侵害に当たると明確に言える」と述べた。その上で「県警は結果を重く受け止め、連絡体制の徹底など再発防止策を講じる必要がある」と指摘した。

