目と耳が不自由でも社会とのつながりを 盲ろう者交流活動30年 福島県郡山市の笠井実さん

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目と耳が不自由でも社会とのつながりを 盲ろう者交流活動30年 福島県郡山市の笠井実さん

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目は見えない。耳は聞こえづらい。でも、社会とのつながりを失わない―。福島県郡山市でマッサージ業を営む笠井実さん(69)は、自らと同じ目と耳の不自由な盲ろう者をつなぐ交流活動を始めて、まもなく30年を迎える。盲ろう者は県内に約150人いるとされるが、家に閉じこもっている人は多いとみている。共生社会の実現を夢見て「寂しい思いをしている人を減らしたい」との思いは募る。
笠井さんは小さい頃から目と耳が悪かった。25歳を過ぎてから病気で視力が急激に落ち、その後、聴力も低下した。他人との意思疎通が一気に難しくなり、テレビもラジオも新聞も、ほとんどの情報源を失った。つらい思いをしたが、治療院を開く目標や、笠井さんが「ひと声ぼれ」した全盲の妻政子さんが支えた。「障害があるからとコミュニケーションを諦めてしまうのは悲しいからね」
33年前、全国盲ろう者協会が設立されたことを知り、入会した。県内の盲ろう者が集まれる場が必要だと感じ、1997(平成9)年ごろから準備を始めた。2000年、福島盲ろう者友の会が正式に発足した。以降、交流会や、支援者を育てる勉強会を開いたりしている。盲ろう者がコミュニケーションをとる方法として指を触って手話を読み取る「触手話」、指をたたくことで言葉を伝える「指点字」がある。活動を通し広めようと努力している。
会の活動にとどまらず笠井さんは積極的に外に出る。「取りえが欲しい」と始めたランニングは家族や伴走ランナーの支えを力に、さまざまな大会に出場してきた。今秋、聴覚障害者の国際スポーツ大会「デフリンピック」が国内で初めて開かれ、福島県はサッカー競技の会場になった。障害の有無を問わず、大いに盛り上がった。スポーツの力が障害者への理解促進や手話通訳者の増加につながればと期待する。
「盲ろう者の自立と社会参加を目指し、共に学びながら活動していきたい」。政子さんは昨年10月に亡くなった。夫婦で追った夢が、今日も笠井さんの背中を押す。■14日に公開交流会
笠井さんが会長を務める福島盲ろう者友の会は14日午後1時から、いわき市文化センターで公開交流会を開く。「ご存じですか?盲ろう者を」をテーマに、板橋盲ろう者の会の川崎美知夫会長が講演する。触手話など、コミュニケーション方法の体験会を催す。参加費は無料で、事前申し込みは不要。