福島県、物価高長期化で独自対策 旅館・ホテル宿泊費補助 医療機関、清酒製造業も支援

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燃料費高騰など長期化する物価高を受け、福島県は来年度から旅館・ホテル業への影響を緩和する独自支援に乗り出す。宿泊費の一部を事業者に補助し、誘客を促進し、地域経済の活性化を図る。国の総合経済対策の決定を受けた対応で、この他、厳しい経営状況が続く医療機関や原料米高騰の影響を受ける清酒製造業なども支援する。内堀雅雄知事が15日、物価高騰対策事業費168億6940万円を含む628億9千万円の2025(令和7)年度一般会計補正予算案を発表した。
物価高に対応する主な事業は【下記】の通り。観光需要の喚起を通じ、旅館・ホテルなどを支援する宿泊費補助事業は「『また来て。』割」と銘打ち、1泊8千円以上の宿泊費について3千円分を割り引く。来年4月以降、大型連休やお盆前後などの繁忙期を避け、4期間に分けて実施する方針。県は期間や販売方法などを宿泊業者と協議する。来年4~6月の大型観光企画「ふくしまデスティネーションキャンペーン(DC)」との相乗効果を狙う。
対象はインバウンド(訪日客)を含む県内外の旅行者で、延べ90万人分の宿泊費補助を想定し、35億3849万円の予算確保を見込んでいる。
東日本大震災以降、福島県の宿泊者数は全国の伸び率に比べて低い状況が続いている。観光庁が発表した都道府県別外国人宿泊数では、2024年の1年間に福島県に宿泊した訪日客は延べ32万8230人で、全国で33位。日本人を含む宿泊数は延べ954万70人で、東北地方の中で唯一、前年から減少するなど、伸び悩んでいる。内堀知事は「一年を通じて福島の地に来て、見て、感じて、笑顔になってもらいたい」と語った。
宿泊費補助以外の事業では、医療機関や薬局を対象とした経営支援を実施する他、酒米の高騰を踏まえた追加支援として清酒製造事業者を対象に2024年産から2025年産への価格上昇分を補助する。電気使用量の削減を目指し、家電の購入者を対象にポイント還元分の補助や、LPガス使用世帯に1世帯当たり2千円を支援する事業も計画している。■事業者賃上げつながる仕組みを
県が発表した物価高対策では、燃料費高騰などに直結する観光業や医療機関、特別高圧電力を使用する中小企業などを支援するが、事業者からは賃上げにつながる好循環を生む仕組みづくりが必要との声が上がっている。
人口減少が進み、労働者の確保が難しくなる中、設備投資を通した生産性向上が欠かせない。今回の補正予算案では、主にエネルギー価格高騰の影響を受ける事業所などが対象となっている。
福島市で建設業を営む40代男性は支援の対象外になるとみており、新たな設備投資をする余力はない。補助金があれば、呼び水にして自社努力によって経営安定化を図れる可能性があるという。「幅広い業種が活用できる支援策を充実してほしい」と求めた。【県の一般会計補正予算案の主要事業】(1万円未満は切り捨て)■物価高への対応
▶省エネ家電購入応援事業











24億4961万円
▶LPガス使用世帯等への支援









11億8408万円
▶中小企業等のエネルギーコスト削減への支援


23億3964万円
▶製造業における省資源化・高効率化への支援


10億7078万円
▶医療機関や薬局等への支援










28億1731万円
▶社会福祉施設等への支援











13億2373万円
▶地域公共交通機関や運送事業者等への支援



10億9187万円
▶生産コストが増加している畜産農家への支援



3億1827万円
▶燃油価格高騰等の影響を受ける漁業者への支援




4561万円
▶原料米高騰の影響を受ける清酒製造事業者への支援
1億9165万円
▶大ゴッホ展を核とした地域経済の活性化







4891万円
▶観光需要の喚起を通じた旅館・ホテル等への支援
35億3849万円■医療や介護、障害福祉分野の処遇改善






47億4629万円