福島のニュース
「頼まれたから手伝った」。10~20代の男女5人の自殺を手伝ったとして自殺ほう助などの罪に問われた福島市、無職の男(36)の初公判。地裁郡山支部で17日に始まった審理では、「一緒に死のう」と考えながら交流サイト(SNS)で自殺希望者を探し、1年足らずで4件5人への接触を重ねたとされる異質さが際立った。証拠調べや被告人質問のやりとりからは「人ごと」とも取れる姿勢が浮かぶ一方、死を強く望んだいきさつは明らかにならなかった。
男は昨年5月から今年1月にかけ、5人の自殺を手伝うなどしたとされる。検察側の冒頭陳述や証拠調べによると、「なつ」というアカウントを使い、X(旧ツイッター)を利用。自殺願望を思わせる人の書き込みを見つけると、「自殺を手伝います」などと相手にメッセージを送り付けていたという。被告人質問で手伝った理由を問われると、「頼まれたから」と語った。
被害者5人のうち、3人とは一緒に死ぬつもりだったとした上で、実際に自殺を試みたと説明。ただ、予定や計画が狂い、「途中で死ぬ気がなくなった」とした。単独で自殺しなかった理由を問われると「未遂に終わった時に助けがあった方がいい」「『皆でやれば怖くない』ではないが、1人ではちゅうちょしてしまう」などと説明した。
男は高校を卒業して派遣社員として働いたが、事件当時は無職だった。証拠調べでは、事件から逮捕までの間に、知人に「ばれて捕まる前に自殺しよう」などと打ち明けていたことも明らかとなった。「手伝ってでも死なせた方がいい。止める人の気が知れない」との捜査段階の供述調書も読まれたが、法廷では「気持ちが変わった」とし、「被害者や遺族に申し訳ないことをした」と謝罪の意思を示した。今は自殺願望はないとも述べた。
審理は被害者5人を匿名とした。被告人質問では弁護側は発生の時系列に沿って1件ずつ問い、検察側は否認や黙秘をした事件を中心にただした。被告が自殺を考えるに至った背景や他者に執着した経緯は判然としなかった。■終始淡々
反応乏しく
首元まで前髪
表情読めず
男は約1時間の被告人質問で検察、弁護側双方からの質問に終始淡々と応じた。一方、一部の罪状には「黙秘します」と認否を拒んだ。弁護人から被害者遺族の感情などを考えたのかと問われても「そうですね」と繰り返すなど、反応は乏しかった。
被害者一人一人の「自殺したい」という言葉が本心からだと何を根拠に判断したのか問われると「相手が道具を用意していたから」などと回答。その後、「被害者の自殺願望は本当の気持ちではなかったのではないか」と問われると、「そうかもしれない」と声を落とした。
自殺への関与がなぜ、法に反するかを尋ねられた際には「ちょっと黙秘します」と回答を留保し、「考えたことはあるけど言いたくない」とした。
初公判には黒色のパーカに灰色のスエット姿で入廷した。頭髪は前髪が首元まで伸び、着用した眼鏡やマスクと相まって傍聴席からは表情の動きなどは読み取れなかった。【主な悩み相談窓口】
厚生労働省が自殺防止のためホームページで紹介している主な相談窓口。▼いのちの電話(0570)783556(午前10時~午後10時)(0120)783556(午後4~9時、毎月10日は午前8時~翌日午前8時)▼こころの健康相談統一ダイヤル(0570)064556(対応の曜日・時間は都道府県により異なる)▼よりそいホットライン(0120)279338(24時間対応)
岩手、宮城、福島各県からは(0120)279226(24時間対応)▼あなたのいばしょ
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