福島のニュース
2025(令和7)年度に福島県内で捕獲された熊は1153頭(10月末時点、暫定値)となり初めて千頭を超え、現在の方法で統計を取り始めた2008(平成20)年度以降で最多となった。県内の熊生息数は約4千~5千頭と推計され、4~5頭に1頭を捕獲した計算だ。しかし、実際の個体数や生息エリアを詳細に把握するのは難しいのが実情。専門家は、捕獲した熊から情報を集め、対策に生かすべきだと提言する。自治体は駆除後の埋設処分への対応に苦慮しており、県や国に積極的な支援を求めている。■数、生息域変化か
環境省がまとめた福島県のツキノワグマ捕獲頭数の年度別推移は【グラフ】の通り。県は農作物の被害や市街地出没による人的被害の懸念などがある場合にのみ捕まえる「有害捕獲」を採用しており、昨年度までの年間平均捕獲頭数は約350頭。県は熊の市街地などへの出没増加が改めて裏付けられたとみている。
一方、県内の熊の生息数は約4千~5千頭と推定される。今年度は4~5頭に1頭を捕獲している計算で、県自然保護課の加藤竜主幹は「本来であれば絶滅してしまう捕獲数」と受け止める。今年の捕獲数増大の要因については「生息数が増えているのか、熊の生息域が山から里地に移行しているのか、詳細な要因は不明だ」と頭を悩ませる。
本来、浜通りに熊はいないとされたが、大熊町で4月に捕獲されるなど、生息域を拡大しているとみられる。来年度に素案をまとめる県の次期ツキノワグマ管理計画を話し合う会議で、生息数の精度を高める方策や人身被害を防ぐための具体的な対策内容を議論していく考えだ。■基礎情報の収集を
こうした中、福島大食農学類の望月翔太准教授(野生動物管理学)はより精度の高い生息数の推定が必要だと強調する。捕獲した熊の血液や体毛などを検体として保存し、県が主体となって基礎情報を集めるべきだと指摘。熊のDNAや歯の年輪などを分析し、①人里近くに出没している熊の年齢②栄養状態―などを把握することで今後の対策に生かせるという。「熊は社会経済活動に影響を及ぼしている。県としても抜本的な対策を考える必要がある」としている。
熊対策で「先進県」とされる兵庫県では2003年から、捕獲した熊の体内にマイクロチップを埋め込んで個体数や行動範囲の把握に努めている。昨年度は餌が大凶作で目撃件数は1128件だったが、人身被害は2件に抑え込んだ。同県自然鳥獣共生課の担当者は「正確な頭数を把握しながら、人と熊との距離を保つ対策を打っている」と強調する。■処分の負担増
自治体は捕獲した熊の処分業務に追われている。福島県は東京電力福島第1原発事故の影響で、会津地方と中通りのクマ肉は2011年12月から出荷制限されており、食用には回せない。
福島市は今年度、前年度の6倍で過去最多となる39頭(11日現在)を捕獲した。ピーク時の10月下旬から11月上旬にかけては、市農業企画課の職員が土日も含めて現場に出向き、駆除した熊を埋める深さ1・5メートル以上の穴をスコップなどで掘る作業に奔走した。担当者は「心身共に大きな負担だった」と振り返る。自治体が駆除した個体をまとめて処分できる施設の整備などを県に求めている。
柳津町でも昨年度比で10倍以上となる43頭(19日現在)を捕獲。駆除した場所での埋め立ては土地所有者らの承諾が得られないケースが多く、町有地に埋める対応を取っている。町は山間部が多く埋設場所に適した平地が限られる。町地域振興課は「(熊処理に関する)減容化技術導入に向けた財政的支援などがあればありがたい」としている。

