【師走ひと模様】寺子屋で後輩導き10年 支援の恩返し被災地に 福島県郡山市出身の東大大学院生 鈴木敦己さん

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【師走ひと模様】寺子屋で後輩導き10年 支援の恩返し被災地に 福島県郡山市出身の東大大学院生 鈴木敦己さん

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福島県相馬市内の会議室に、ペンを走らせる音が響く。市教委が中学生向けに毎月開く寺子屋学習会だ。郡山市出身の東京大大学院生鈴木敦己さん(28)=工学系研究科建築学専攻=が机の間を回り、高校受験を控えた生徒らの質問に向き合う。
東日本大震災の被災地支援で始まった学習支援ボランティアに携わり、10年になる。熱心に学ぶ「後輩」の姿をかつての自分に重ねる。「これまでに自分が受けた支援に恩返しがしたい」と指導に熱を注ぐ。








寺子屋学習会は2012(平成24)年、震災の津波で家を失った被災者のために始まった。仮設住宅で東京大生が小中学生に勉強を教えた。現在は市生涯学習会館に会場を移し、市教委が市内の中学生を対象に月に2日間開いている。
鈴木さん自身も中学時代に震災を経験した。安積高校に入ると、学習塾による講師の派遣、作家の村上春樹さんとの対談、中国・上海の高校生と交流する事業への参加など福島への手厚い支援の中で学びを深めた。
一時期、受験勉強への重圧に苦しんだが、さまざまな人と出会い、世界が広がった。被災地を気にかけてもらい、支えられている環境にいると気付いた。「多くの経験を積ませてもらった。将来は社会に貢献できる人間になる」と決意。さらに学習に集中することができ、2016年春に安積高から東大工学部に現役合格を果たした。
心の片隅には「恩返しがしたい」との思いがあった。東大の寺子屋活動を知り、すぐに参加を決めた。
活動を始めて10年がたち、ボランティアを務める学生の中で最年長となった。問題解説に加え、「根を詰め過ぎない」や「やる気に左右されず地道に取り組む」といった勉強との向き合い方も助言する。
学習時間の合間には座談会を開き、中学生と交流を深める。自身の学生生活の様子や研究内容、子どもの頃に読んだ本など、話すテーマはさまざまだ。
生徒からは「将来を考えるきっかけになった」「東大生になる夢を持った」などとメッセージが寄せられる。そんな感想を読むたび、被災地支援の活力になる。








まだまだ、恩返しは終わらない。年明けに能登半島地震の被災地で行われる学習支援への参加も計画している。子どもに寄り添いながら、学習補助や進路相談など、自分にできる支援を提供する。時間が許すなら、他の被災地へも出向きたいと思っている。
大学院修了後の進路として、教育現場に携わる仕事に就きたいと考えている。ボランティアを通し、指導した生徒の成長を間近で見られることにやりがいを感じた。「社会人になっても寺子屋の活動は続けていきたい」と理想を描く。