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相馬双葉漁協(本所・相馬市)は、東日本大震災、東京電力福島第1原発事故の影響などで水揚げが減少しているアサリの資源量回復に乗り出す。県内で唯一、漁が行われる相馬市の松川浦湾内に、稚貝の着底に適した砕石を今月、敷設した。定期的に成育状況を調査し、今後の施策に役立てる。相馬のアサリは漁業復興の旗振り役の一つとなっており、漁業や観光関係者は漁獲量の拡大と集客に期待する。
直近約20年のアサリの水揚げ量の推移は【表】の通り。2005(平成17)年は約182トンを誇った。震災直前の2010年も74トンと安定した水揚げがあった。2011年の震災・原発事故で操業を見合わせた。2016年に復活したが、同年の水揚げは約5トンにとどまった。試験操業の拡大操業への切り替わりや、震災以降の資源保護の影響で2021(令和3)年に増加に転じたが、その後は減少傾向にある。水揚げが減った理由として同漁協は、津波による海底地形の変化、堤防の延長による海水の出入りの減少、水温の変化などを挙げる。ただ、詳細は不明という。
同漁協は、自然繁殖を促す取り組みに着手する。今月、試験的に10メートル四方で高さ10センチ分の砕石を3カ所に敷設した。稚貝の着底が期待できる2・5~5・0ミリの砕石を使用した。今後は年2回のペースで敷設箇所を調査し、個体が増えているか確認する。効果を検証し、敷設面積を拡大させる。ただ、アサリが水揚げに適したサイズに成長するには3年程度かかるとされ、すぐに資源が回復するのは難しいとみられる。
アサリの食害生物「ツメタガイ」や「サキグロタマツメタ」の対策も検討している。同漁協は近年、駆除を実施しているが、アサリの漁獲量回復に大きな影響はなかった。天敵からアサリを守るネットの設置などを想定する。
アサリ漁歴65年の菊地寛さん(80)=相馬市=は「昔は大粒の貝がたくさん採れた。せめて半分程度の量に戻ってほしい」と願う。最盛期は1日最高250キロの水揚げがあったが、近年は1日15キロ程度。湾内に沈むがれきの撤去や食害生物の駆除作業にも積極的に参加してきた。「若い世代に漁を引き継げるよう、体が動く限り取り組みを続けたい」と海を見やった。■潮干狩り再開めど立たず
関係者復活願う
震災前、松川浦の象徴だったアサリの潮干狩りは今も休止中で、再開のめどは立っていない。地震の地盤沈下で遠浅の海がなくなった他、カキの殻が増え来訪者がけがをする恐れがあるのが要因だ。現段階で、復旧事業の計画はない。
潮干狩りは5月の大型連休に書き入れ時を迎え、年間3万人前後が訪れた。潮干狩りには大量の貝が必要で、養殖が欠かせない。以前は県外から稚貝を購入し、海に放して育てていた。近年は全国的にアサリが不足しており、調達は困難という。自然繁殖で潮干狩りができるまで増やせるかは見通せない。
松川浦沿いで「旅館かんのや」を営む管野拓雄さん(67)は「昔は潮干狩り客の車で駐車場がいっぱいになった」と懐かしむ。現在も旅館のメニューでアサリを使ったご飯や汁物を提供しているが、量は十分に確保できていない。「松川浦と言えばアサリとノリ。アサリ料理を名物として提供できれば人を集められるかもしれない」と資源量回復を望んでいる。

