福島のニュース
福島医大医学部4年の張[はり]野[の]春菜さん(23)=神奈川県寒川町出身=は、子どもがカードゲーム感覚で防災グッズの荷造りを体験できる講座「災[さい]強[きょう]バッグ」を考案し、県内外への普及を目指している。命を守るため必要な食料などの重さを体感しながら避難時に持ち出す物を厳選する。東日本大震災と東京電力福島第1原発事故をきっかけに県内で医療や災害対応を学んでおり、「防災を自分事として考える大切さを福島から伝えたい」と意気込む。
布団、ヘルメット、乾パン、ハザードマップ…。防災用具や食材などが記された手のひらサイズのカードが並ぶ。裏には「200g」「500g」などと重さが記載してある。災強バッグの仕組みは【図】の通り。避難所に持っていきたい物をカードの中から選ぶ。水の入ったペットボトルを使い、選んだ総量と同じ量をリュックサックに詰め、背負って重さを体感できる。無理なく持てる重量を確認し、持っていくべき物を選択する力を養う。
カードには「ぬいぐるみ」「ゲーム機」なども。避難所を想像し、本当に必要な物は何か取捨選択してもらう狙いがある。
震災と原発事故が起きた時、張野さんは小学2年生だった。発生当時、父が出張で仙台市にいた。テレビが報じる大津波の被害、避難所でのボランティア活動…。父は無事だったが、東北地方の惨状がひとごとに思えなかった。
複合災害に見舞われた本県で学びたいと、福島医大を進学先に選んだ。災害対応に当たった医師らから「3・11」の経験を聞き、日本災害医学会学生部会で災害医療の現状や課題を学んだ。能登半島地震発生後は石川県で災害派遣医療チーム(DMAT)の情報処理ボランティアに携わった。学びを深める中、医療のみでは災害時の支援としては限界があると実感し、日頃の「備え」こそが命を守るとの思いを強くした。
学会で知り合った東北地方や北陸地方の医大生らと2024(令和6)年4月に学生団体「災強のすけっと」を結成。活動の中で「災強バッグ」を考案した。共働き家庭が増える中、子どもだけで避難する場合もあるとの考えもあった。
すけっとの活動拠点となる仙台市などでワークショップを重ね、他団体も使えるようにマニュアルを作った。災強バッグの狙いを伝え、課題を聞き、改良につなげている。昨年12月に取り組んだ仙台市の民間学童保育施設「ぐらんりんく」では当初、20キロ程度の重さから必要な物を厳選し、2キロ程度に抑えた児童もいた。職員の中沢小夏さん(31)は「災害時に必要な物を楽しく学べて、子どもたちは意欲的に取り組んでくれた」と効果を実感する。
小児科医を目指している張野さんは、子どもたちが防災バッグに関心を持つことで、家族で話すきっかけにもなってほしいと望む。将来は県内で働くつもりだ。「有事の際に上手に歯車が回る地域をつくりたい。防災に関する正しい情報を福島から発信していく」と決意する。
災強バッグは仙台市の助成事業「仙台市ユースチャレンジ!コラボプロジェクト(若者版・市民協働事業提案制度)」に採択され、教材化を進めている。災強バッグやワークショップ開催に関する問い合わせは災強のすけっと
メールh.harino@saikyosuketto.orgへ。

