福島県のいわき信組を刑事告発 虚偽報告疑い、元役員も 東北財務局、異例の対応

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福島県のいわき信組を刑事告発 虚偽報告疑い、元役員も 東北財務局、異例の対応

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巨額の不正融資や反社会的勢力への資金提供が明らかになったいわき信用組合(本部・福島県いわき市)について、財務省東北財務局は21日、調査に虚偽の報告や答弁をしたとして、協同組合金融事業法(協金法)違反の疑いで、信組と元役員らを県警に刑事告発した。東北財務局が刑事告発するのは初めて。監督官庁を偽り続けた責任は重いと判断し、異例の対応に踏み切った。県警は受理しており、今後、捜査を本格化させる見通し。
東北財務局によると、元役員らは結託し、元職員の横領によって生じた損失を信組の現金で補填[ほてん]した事実を財務局に報告せず、一連の不祥事に対する内部調査を実施したとうその説明をした。不正融資に関するデータを保管したパソコンについて、不正発覚後に管理担当者が「ハンマーで壊した」と事実と異なる説明をしていた。
虚偽の報告や答弁を主導した元役員らに加え、組織の責任も重いとして、法人としてのいわき信組も告発した。告発の対象とした元役員らの氏名や人数は「今後の捜査に支障を及ぼす可能性がある」として、明らかにしていない。
不正融資や反社会的勢力への資金提供を巡るいわき信組の経過は【表】の通り。東北財務局は長期間にわたる隠蔽[いんぺい]、事実と異なる説明などの悪質性を問題視し、昨年5月に業務改善命令を発出。金融庁は昨年10月、業務の一部停止と改善命令を出し、虚偽の答弁によって全容解明に重大な支障が生じているとして、元役員らへの刑事告発を検討していた。
金融当局が預金を取り扱う金融機関を告発するのは極めて異例。金融庁によると、直近では2004(平成16)年に旧UFJ銀行、2010年に旧日本振興銀行をそれぞれ、銀行法違反(検査忌避)で刑事告発した。■総代ら「誠実に、真実語って」
「取り調べに誠実に向き合い、真実を語ってほしい」。総代らからは、旧経営陣に説明責任を果たしてほしいとの声が上がった。
総代を務めるいわき市の60代男性は「真実を語ることが、今後のいわき信組を守ることにつながる。旧経営陣には真摯[しんし]な姿勢を望む」と厳しく注文した。いわき信組を10年ほど利用している50代男性は「元役員らは説明責任をしっかり果たしてほしい」と求めた。
県信用組合協会の梅沢国夫会長(相双五城信用組合理事長)は「誠に遺憾。極めて重く受け止め、新体制の下、捜査に全面的に協力していただきたい」とコメントした。
全国信用協同組合連合会(全信組連、本部・東京都)は「引き続き、いわき信用組合の経営やコンプライアンス面の指導、サポートをしていく」とした。■不正の深刻さ重視
識者
福島大行政政策学類の高橋有紀准教授(刑事法学)は、財務省東北財務局が刑事告発に至った背景について「同種の不正や隠蔽[いんぺい]行為に対し、強い姿勢で臨む点を社会や各金融機関に示す意図があるのだろう」と指摘している。
高橋准教授は一般的に虚偽の報告や答弁は「行政指導・処分のみで対応することも少なくない」との見方を示した上で「今回は不正の深刻さと隠蔽の意図を重く見たため告発に至ったと考えられる」とした。「捜査などを通じ不正の経緯や背景が明らかになると期待される」と述べた。■HPにおわび掲載
いわき信組
いわき信用組合は21日、刑事告発を受け「極めて重く受け止め、今後の捜査に誠実かつ真摯[しんし]に対応し、捜査に全面的に協力していく」とするおわびの文書をホームページに掲載した。
いわき信組は昨年12月19日、旧経営陣20人に約32億円の支払いを求め、地裁いわき支部に訴状を提出した。旧経営陣に対し、追加の民事提訴や刑事告訴で責任を追及していく方針を表明している。刑事告訴の時期や規模については「準備中で回答できない」とした。
一連の不祥事に関与したとされる江尻次郎元会長は21日、福島民報社の取材に「今は何も話せない。今後、機会があれば利用者らに弁明したい」と自宅のインターホン越しに答えた。<いわき信組の不正融資を巡る経緯>【1990年代】反社会的勢力に資金提供開始【2004年】





ペーパーカンパニーを使って大口融資先に迂回[うかい]融資【2007年】





大口融資先への無断借名融資開始【2011年】





東日本大震災







大口融資先への資金提供終了







隠蔽[いんぺい]のための無断借名融資開始【2012年】





公的資金200億円注入





無断借名融資の償却開始【2024年】
11



迂回融資の事案公表【2025年】
5月下旬


預金者名義の口座偽造問題発覚







組合員の1人が江尻次郎元会長を告発
5月29日

東北財務局から業務改善命令
5月30日

第三者委員会が調査報告書公表
6月13日

総代会(新体制決定)







組合員の1人が江尻元会長の告発取り下げ
6月30日

東北財務局へ業務改善計画提出







全容解明へ向けた特別調査委員会の設置
10月31日
特別調査委員会の報告書公表。金融庁から業務の一部停止と改善命令
11月14日
金融庁に業務改善計画を提出
12月19日
いわき信組が旧経営陣に約32億円の支払いを求め地裁いわき支部に提訴【2026年】
1月21日

東北財務局がいわき信組と元役員らを県警に刑事告発※刑事告発
警察などの捜査機関に犯罪があったことを告げ、犯人の処罰を求める手続き。誰でも告発人となれる。一方、告訴は犯罪の被害者や遺族、法定代理人らが捜査機関に被害を申し出て犯人の処罰を訴えること。警察は受理後、速やかに捜査を終えた上、意見を付して書類や証拠物を検察官に送付しなければならない。