【2026ふくしま衆院選 県民の視点】エネルギー政策 メガソーラー共生の形は 原発再稼働事故の教訓を

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【2026ふくしま衆院選 県民の視点】エネルギー政策 メガソーラー共生の形は 原発再稼働事故の教訓を

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東京電力福島第1原発事故の発生から15年を前にエネルギー政策が岐路を迎えている。県内で再生可能エネルギーの普及をけん引してきた大規模太陽光発電所(メガソーラー)は景観や安全との調和に揺れる。全国では原発の再稼働が加速する一方、トラブルも相次ぐ。電力需要の高まる中、複合災害を経験した県内の有権者は安全、安心が担保されているかを注視する。政治に求めるのは、国策の展望までを見据えた議論だ。







福島市町庭坂で盆栽園を営む梅津朝雄さん(86)は公示後初の週末となった1月31日、自宅近くの広場から雪化粧した吾妻の山並みを眺めた。先達山の中腹にあるメガソーラーが目に入る。「こんな眺めの良い所に何で、わざわざ造ったのか」。来訪者を迎えようと、手作りした展望ベンチに腰かけ、ため息をついた。
メガソーラーは2021(令和3)年に県の林地開発許可を得て動き出した。木々が切り倒され、約9万5千枚のパネルが並ぶ。昨年9月末に商業運転が始まり、売電は2040年まで続く見通しだ。
町庭坂地区は吾妻山麓に位置する。吾妻連峰から南の安達太良山までを見渡せる。遠方からスケッチに通う人がいるほど壮大な眺望が自慢だった。
県は原発事故を機に、電力供給の軸足を再エネに移した。県内のエネルギー需要に占める再エネ導入割合を100%とする目標を掲げ、新規参入を促進。県内の太陽光発電の最大出力合計値は昨年9月時点で1993メガワットに達し、都道府県別で最も多い。
設置先は各地の山林にも広がった。県森林保全課によると、2013(平成25)年以降の太陽光関連の林地開発許可件数は116件。事業者と住民のあつれきを生むケースも出ている。西郷村羽太の工事現場では2020年からの4年間で、周辺の水田や村道への土砂の流出が9度、確認されている。
衆院選では、メガソーラーの規制強化をはじめ、風力や水力を含めた再エネ普及を目的に、消費者が電気料金に上乗せして払う負担金の廃止論が争点に浮上する。ベンチの傍らに立つ看板に「一人座して将来展望を考えるも良し」と自ら記した梅津さん。一律の締め付けは早計だとも感じており「地域に支持され、納得を得た計画なら進めるべきだ」と共生の形を求める。







生成人工知能(AI)の普及による電力需要の増大を背景に、全国で原発への「回帰」が進んでいる。衆院解散2日前の1月21日には東電が柏崎刈羽原発(新潟県柏崎市、刈羽村)の6号機を再稼働させたが、直後に制御棒を巡るトラブルが発生した。
「あれほどの原発事故が起きたのに、なぜ再稼働ができるのか」。浪江町津島地区の下津島行政区長を務める今野秀則さん(78)は憤りを口にする。
約1500人が暮らした津島地区は全域が帰還困難区域とされた。2023年春に全体の1・6%、153ヘクタールが特定復興再生拠点区域(復興拠点)として避難解除された。ただ、昨年末時点で居住者は12世帯19人のみ。大半の住民は自宅の公費解体を終えた。かつての古里の姿はない。今野さんは「原発の安全に『絶対』はない。一度事故があれば住民の人生と地域の将来を狂わせる」と警鐘を鳴らす。
国内では柏崎刈羽6号機を含めて15基の原発が再稼働し、8基が新規制基準への適合性審査中だ。柏崎刈羽の再稼働を巡り、新潟県が実施した県民意識調査でも賛否が拮抗[きっこう]したように、原発の是非は評価の難しい問題のはずだ。にもかかわらず、今野さんの目には経済対策など他の問題の陰に隠れているように映る。
浜通り全域を舞台とする福島県4区の有権者だ。大玉村に避難しているため、候補者の訴えにじかに触れる機会は少ない。衆院選を報じるニュースなどから「被災地や被災者にどれだけ当事者意識を向けてくれているか」を見極め、投票するつもりだ。