福島のニュース
衆院選は8日の投開票まで残り2日となった。福島県内4小選挙区の候補者15人のうち、12人が交流サイト(SNS)を駆使した選挙戦を展開している。福島民報社が投稿動画を分析し各陣営に確認したところ、数十秒程度に短く編集された「ショート動画」が全投稿数の約8割に上った。候補者の主張や人柄を短時間で端的に伝える狙いがある。衆院解散から投開票日までが戦後最短となる16日間の超短期かつ厳冬期の決戦で、ショート動画がSNS戦略の主役になっている。
ユーチューブを運営する米グーグルによると、ショート動画は最大3分。時間対効果「タイムパフォーマンス(タイパ)」を重視する若年層や現役世代、無党派層などへのアプローチに有効とされ、こうした層への浸透が勝敗の鍵を握るとみて各陣営が重視している。雪や寒さを考慮して街頭演説などを抑制している陣営にとっては、時間や場所を問わないSNSでの「空中戦」が効率良く支持を広げるための心強い武器となっている。
福島民報社は、公示日の1月27日から31日までの5日間、県内の候補者15人が主要SNSに投稿した動画を視聴し、各陣営に聴き取るなどして調べた。2区と4区の共産党候補、2区の無所属候補を除き、12陣営の投稿が確認された。SNSを活用していない陣営は投稿を担う人材の不足などを理由に挙げた。
調査結果は【表】の通り。使用頻度が高いのはユーチューブとインスタグラムだ。動画の投稿総数193本のうちショート動画は163本に上り、全体の84%を占めた。投稿した動画の全てがショート動画だった候補者は5人で、内訳は自民党3人、中道改革連合1人、参政党1人。
動画の内容は街頭演説や遊説の様子、大物政治家による応援演説、政策の要点などを伝えるものが多い。有権者に親しみを感じてもらうため政治家を志した理由や料理の風景などをアップしたり、字幕を付けて文字と音声で訴求力を高めたりする戦略も垣間見える。
一方、より効果的な広報発信を模索し、各陣営は試行錯誤を続けている。ある陣営のSNS担当者は「政治家は基本的に話が長い。短い動画に編集するのが難しい」と打ち明け、「手探り状態だ」と述べた。
LINEリサーチによると、全国の10代~60代の計約5千人を対象にしたウェブ調査で、「ショート動画をほぼ毎日見ている」と回答した割合は10代が約7割、20代は約6割に上った。30代以上では3~4割で、幅広い年代に広く利用されている。■識者「幅広い世代へ訴求できる」
SNSと政治の関係性に詳しい立命館大産業社会学部の谷原つかさ准教授(39)は、ショート動画について「政策や人柄を理解してもらうための『入り口』で、幅広い世代に訴求できる」と利点を挙げる。ショート動画を足掛かりにして、候補者の主張を十分に伝えられる長時間の動画やライブ配信に誘導する戦略が主流とみている。
一方で、閲覧履歴を基に似たような動画ばかりが表示される「フィルターバブル」という現象に陥りやすく、生成人工知能(AI)技術の進歩で偽動画も多いと注意を促す。谷原准教授は公式情報を確認することを推奨し「投票前に立ち止まり、自分が政治に何を求めているのかを考える時間が必要だ」と話した。

