【復興検証 震災・原発事故15年】第3部 移住定住➋ 物件のミスマッチ深刻 「原則」超えた支援が鍵

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【復興検証 震災・原発事故15年】第3部 移住定住➋ 物件のミスマッチ深刻 「原則」超えた支援が鍵

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全国から移住を希望する人の相談が増加の一途をたどる福島県大熊町。「申し訳ないですが隣町を含め、空きが出るのを待ってもらう状況です…」。住まいについての問い合わせに対し、担当の生活支援課内に心苦しそうな声が響く。課長の板垣智は「家族向けの住宅需要が高まっている」と説明する一方、要望に添えない時も多い状況を明かす。
課題は町で2023(令和5)年に教育施設「学び舎
ゆめの森」が完成して以降、顕著になった。0歳から15歳まで一体で教育を受けられる環境は首都圏などの子育て世帯から高い関心を集めている。ただ、空いているアパートはあっても2LDK以上の間取りで入居可能な民間の物件は町全体の1割の10戸未満とミスマッチが生じている。大手不動産検索サイトでも双葉郡の空きのある賃貸物件は800件程度だが、2K以上は1割ほどの上、多くが南部に集中する。
需要があるにもかかわらず、被災地全体で住宅整備の動きは様子見による遅れや偏りが生じている。関係者は被災地の需要の不確実さに国の支援が限られている現状が重なるのが要因と分析する。
「避難指示解除が遅い地域ほど環境面から帰還や移住の動向が不透明だ」。浜通りのある不動産事業者は建設の「足踏み」の理由を明かす。別の事業者は国が借り上げるなど空き室のリスクに対する支援が乏しい現状を訴える。アパート建設などを後押しするための補助も各自治体は自主財源で負担しているため限りがあるのが現状だ。
国の支援で市町村などが整備できる福島再生賃貸住宅も「安易に追加の建築はできない」との声が漏れる。7市町村が予定も含めて約400戸を設置するが、整備費の8分の1の自治体負担に加え、修繕など維持費用も負うため、慎重にならざるを得ない。
国が住居整備への補助を限定するのは理由がある。広く恩恵がある企業立地などは復興財源で支援できる。一方、事業者の住宅整備は民間の資産形成に当たると見なされ、後押しが困難という。再生賃貸住宅も家賃収入がある以上、全額を国が充当する特例は認められない。
だが、「原則」を超えた支援がなければ現状は打開できないとする声も。大熊町生活支援課長の板垣も「住宅不足解消には即効性が必要。町独自で新たな補助制度を設けたが、やはり国の財政支援は不可欠だ」と特例措置を求める。
災害後の居住問題について研究する福島大行政政策学類教授の西田奈保子は住宅需要の不確実さが高い地域で、建設の動きが止まる「住宅前線の停滞」が起きている現状を説明。民間の投資を促す取り組みを行政が効果的に行うよう提言する。「最初は公的関与の下で住居機能の確保を支えつつ、にぎわいをつくるための支援やまちづくりにも力を入れるべきだ」と、人が呼び込める地域だと広く認識される環境を整えるため、国の施策が必要としている。
住居問題の打開策として空き家の活用も検討されているが、思うように進まない現実がある。(文中敬称略)