【復興検証 震災・原発事故15年】第3部 移住定住❸ 空き家活用課題山積 交渉、改修の支援合わず

  • [エリア] 双葉町 飯舘村
【復興検証 震災・原発事故15年】第3部 移住定住❸ 空き家活用課題山積 交渉、改修の支援合わず

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「自分たちに帰ってくるなということか」。東京電力福島第1原発事故の被災地で避難で居住していない家屋の貸し出しの話題になると、所有者からはしばしばこうした感情的な声が漏れるという。
移住者向けの住居の不足や偏りが指摘される中、各自治体は解体されずに残った空き家の活用に知恵を絞る。ただ、帰還するかどうか判断に迷っている人も多く、「空き家」として扱われ、移住者に貸すのをためらう場合もある。「人に貸し出し、『帰還を諦めた』と近所に思われたくない」との地域内での目を気にかけるケースも出ている。
貸し出しが承諾されても、長期の避難により改修が必要な家屋は少なくない。福島県の移住コーディネーターの蓬田守(74)は「長く使われなかった家は補修に費用や時間がかかる」と指摘した上で、「アパート感覚」で即入居できると想定している移住者が大きなギャップを感じる例も挙げる。
こうした状況から、移住者向けの空き家の掘り起こしや活用には課題がある上、避難指示解除の時期などでも地域差が生じている。双葉町の空き家・空き地バンクは100件近い登録があるが空き地が大半で、空き家は成約済みだ。飯舘村は20件ほどの空き家が登録されているが、賃貸は半数ほどで補修を必要とする物件もある。使える空き家の確保などに向け、国は福島再生加速化交付金を活用した自治体ごとの対策を促すが、被災地の現状にそぐわない点も指摘される。
避難者との交渉を含む空き家の掘り起こしでは、交付金を活用した事業なども可能という。ただ、復興事業には常に復興の進み具合に応じた見直しが付きまとう。自治体からは「交付金など財政支援の終了時期も示してもらわなければ人材の長期雇用が難しい」と慎重な声も聞かれる。
改修も交付金によって250万円を上限に補助が可能だ。全国的に見て手厚い額だが、長期避難で家屋の老朽化が進んだ浜通りでは十分と見られていない。利用は2023(令和5)年度は5件、2024年度は9件と広がりを欠く上、申請そのものが通らないなど、交付金の要件の厳しさも指摘される。空き家を貸し出すため、事業者が改修する場合もアパート建設費と同様で「公的支援はできない」(復興庁)という。
被災地では住居について「圧倒的に不足」と表現される状態が続く。現状を打開しようと、民間有志が空き家補修のワークショップを開くなど新たな動きも出始めた。ふくしま12市町村移住支援センターも先進事例を周知するセミナーを開催。1月は高知県梼原町の職員を招き、町が所有者から空き家を借りる契約を結んで改修まで行い、移住者に貸し出す仕組みを紹介した。副センター長の藤川城一は「自治体関係者から『参考になった』『興味を持った』との意見が上がった」と高い関心が寄せられた状況を説明する。
ただ、新たなを手法を取り入れるのにも財源の問題が付きまとう。地元からは実情に合った補助の見直しなどを国に求める声が強まっている。
移住定住の問題は住居関連だけではない。移住者の孤立を防ぎ、地元住民とのあつれきをいかになくすか。被災地は苦悩を抱えている。(文中敬称略)