福島のニュース
「新しく移り住んだ人と元からの住人をただ一緒にすればいいわけではない。つながりをつくる場が必要」。福島県楢葉町の古谷かおり(41)は実感を込めながら語る。まちづくり会社・ならはみらいの委託を受けて、シェアハウス「kashiwaya(カシワヤ)」の管理人を務めて約4年になる。自らも町外の出身で、ただ住むだけでは地域との接点は生まれないと痛感。両者を結ぶコミュニティーの場として切り盛りし、多くの移住者を受け入れてきた。
「地域に全て合わせて生活するつらさはある」「一歩踏み出す勇気がいる」。被災地で暮らす背景や価値基準が地元住民とは異なる中、理想を追いながらも悩みを抱える移住者は多い。だからこそ、入居者のアイデアを取り入れたイベントなど地元との絆を育む機会をつくってきた。先輩移住者らと知り合い、新たな挑戦に取り組むなど人の輪に恵まれた若者もいる。
ただ、これまで20人が住み、実際に楢葉町への定住に至ったのは地元出身者を含む2人で、近隣に住んだのは2、3人にとどまる。「支え合える仕組みが充実すれば守れたつながりもあったかもしれない」。地域の結び付きを深めるための支援策はまだまだ不足していると感じる。
移住者が増え続け、帰還した住民の数に迫る地域もあり、事情は複雑化している。地域に活力を生む移住を歓迎する声が上がる一方、「補助金目当てではないか」などと偏見を持ち「壁」をつくる住民も一定数いるという。子育てや仕事の関係で相談相手が必要な転入者は多いが、地域とつながる機会は限られる。コミュニティー形成はノウハウがあまり蓄積されていない分野である上、自治体ごとの取り組みは住環境整備など優先すべき問題も多数ある中、「濃淡」があるのが現状だ。
制度上の課題も少なからずある。楢葉町は移住者交流会を開いているが、対象は移住者や移住希望者を主にせざるを得ない。福島再生加速化交付金は移住・定住の環境整備を主な対象にしているため、町民との交流目的の場合は活用しにくい面があるためだ。町政策企画課課長補佐兼移住・定住係長の松本昌弘は「移住者も参加できる町民によるイベントなどにも使いやすくなれば、より効果的なはずだ。交付金の使い方に柔軟さを持たせてほしい」と訴える。
被災地の住民の融和については国も重要なテーマに位置付けた。新たな復興基本方針では「帰還者と移住者のコミュニティー形成に取り組む」と盛り込まれた。ただ、復興庁は新年度に双葉町に新たな拠点を設けるが、財政支援以外の具体的役割は今も見えづらいとの指摘も上がる。
行政の手の届かない部分を埋められるよう専門に取り組む団体の必要性も増すが、「民間だけでのつながりづくりは難しい」と古谷は話す。補助などが乏しく、熱意を持って取り組みたい人も時間がかかる中で疲弊する例も多いという。「コミュニティー形成の重要性は数字で表しにくい。それでも行政が事業を評価し、重要さを認めてサポートをする必要がある」と官民一体の取り組みが実現できるよう求めた。
移住先で生活の基盤となる仕事。その選択肢を増やす必要性も増している。(文中敬称略)

