【震災・原発事故15年】津波の記憶 舞台で継承 いわきと交流 東京のNPO 福島県内外で上演へ

  • [エリア] いわき市
【震災・原発事故15年】津波の記憶 舞台で継承 いわきと交流 東京のNPO 福島県内外で上演へ

福島のニュース


東日本大震災の津波で甚大な被害を受けたいわき市平薄磯地区の記憶と教訓が舞台で継承される。発災時を追体験する漫画を原作に、劇を通して演者が被災の「経験」を伝えていく。中心となるのはいわきの被災者とも交流してきた東京都のNPO法人で、震災体験の継承活動や防災教育に取り組んできた。震災の記憶の風化が課題となる中、関係者は県内外での上演を通して福島の教訓を広め、大規模災害に備える意識を高めてもらおうと準備を進めている。

舞台の原作となるのは、いわき市平薄磯地区に住む高校3年生の主人公・佳文の被災体験を描いた漫画「ある光」。作者は業界紙で記者をしていた阪本繁紀さん(33)=和歌山県=で、2024(令和6)年に刊行された。平薄磯地区などの被災者への取材を重ね、証言を参考に物語を編み上げた。津波で大切な人を失った主人公の喪失感や避難所での暮らし、東京電力福島第1原発事故直後の市内の様子、その後の地域の復興などを作品として表現している。
舞台公演の製作委員会の中心を担うNPO法人・スターズアーツ(東京)は15年前に復興支援団体として設立。各地で被災の証言などを定期的に舞台化して震災教訓の継承に努めてきた。過去にいわき市の語り部団体と協力して朗読会を開催した縁もあり、いわき市の被災状況を緻密に描写し、多くの人に観劇を通して震災の追体験をしてもらえる作品として「ある光」の舞台化を阪本さんに打診した。
稽古は都内で1月中旬に始まった。舞台は朗読劇か演劇とする方向で、照明や音楽などの舞台演出を活用して防災について考える作品を目指す。出演者や上演の時期は今後詰めるが、東京都や和歌山県、本県での上演を想定している。外部の演劇団体や学生の演劇部にも演じてもらい、震災伝承の輪を広げていく構想もある。
スターズアーツ理事長の本宮透雄さん(62)は「被災者の思いに寄り添いながら丁寧に劇を作っていきたい」と話している。原作者の阪本さんは「幅広い人に作品のメッセージが伝わり、受け手がそれぞれの古里や自然災害について考えるきっかけになってほしい」と思いを語った。
■いわき語り部の会
大谷会長
教訓広める契機に
平薄磯地区などを描いた舞台の実現に際して、いわき市では防災や復興に向けて歩む地元への関心の高まりを期待する声が上がる。
同地区で被災したいわき語り部の会の大谷慶一会長(77)は「薄磯の被災を扱った物語が舞台を通じて広く紹介されるのは素晴らしい」と歓迎する。同地区は遠浅の海に面し、高さ8.51メートルの津波が襲来。市内最多の111人が犠牲になった。大谷会長は迫り来る津波から逃れた体験を語り継いでおり「ある光」の原作の制作に当たっての取材にも協力した。
震災の発生から間もなく15年。活動の中で、発災後に生まれ、震災の悲劇について深く知らない子どもとも接するようになった。「舞台が震災の教訓を広めるきっかけになれば」と期待を込めた。