【復興検証 震災・原発事故15年】第3部 移住定住❺ 仕事の選択肢広げて 求められる長期的支援

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【復興検証 震災・原発事故15年】第3部 移住定住❺ 仕事の選択肢広げて 求められる長期的支援

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田村市船引町にある旧石森小を利用したテレワーク拠点・テラス石森。一画で、市から委託を受けた「田村サポートセンター」のスタッフが移住に関する相談に対応している。関東地方を中心に問い合わせは増え続け、過去5年間の件数は約950件に及ぶ。
「ほとんどの人が就ける職種、内容など仕事について質問する」。担当の谷口恭平(43)は仕事の確保への支援が移住先を選ぶ際の大きな決め手となっている状況を説明する。市は不足する働き手の確保との「両輪」の取り組みとして、希望者が地元企業を訪問するツアーなどを展開。事業者の紹介や履歴書の添削など手厚い伴走支援を講じている。
しかし、2024(令和6)年度は求職者に限った88件の相談のうち、マッチングに至ったのは12件と順風満帆とは言い難い。谷口は震災からの産業復興が途上の被災地を含む本県では仕事の選択肢が限られる課題を指摘。「移住希望者と地元のニーズをより細かくつなげる仕組みが必要だ」と訴える。
震災、原発事故被災地への移住のきっかけで最も多いのが「起業・転職」だ。復興が進む地域で事業に挑戦する人、早期退職して被災地への貢献も兼ねて新たな職を求める人などさまざまだ。仕事の受け皿づくりは不可欠だが、「自治体だけでは限界がある」との悲鳴も上がる。
田村市でも製造業や介護職、林業などは地元の求人が多く、移住者の就業にもつながりやすい。近年はリモートワークなどが人気だが、都会でデザインやウェブ制作などに携わった経験者でも一から顧客や仕事を見つけるのは難しいケースが多い。つなぐための国の支援策は復興事業を含めて「適切なものはない」(田村市)のが現状だ。
避難指示が出た12市町村では、国の交付金を活用した最大400万円の起業支援金制度がある。同市でも地域おこし協力隊員らが多彩なビジネスを興そうとするが、限られた任期で経営を軌道に乗せるのは難しく、起業・定着に至らない場合もある。市企画調整課の担当者は「設備投資に多大な費用がかかる傾向があり、綿密な経営計画など開業後のサポートなども重要だ」と長期的に経営を続けるには支援金だけでは不十分な点もあるとする。
「移住者にとって地域の状況の把握や関係づくりには時間がかかる」。2022年度に田村市を拠点にキッチンカーを開業した竹前啓治(48)は当時を振り返る。事業を軌道に乗せるまで苦労はあったが、助けとなったのは市の独自支援だ。
市は人口が戻り切らない被災地に合った仕事づくりの一環で、移住者によるキッチンカーの起業支援に力を入れており、竹前も車両の無償貸与によって初期投資が大幅に抑えられた。キッチンカーを柱にした市によるイベントなども地元の野菜を使ったカレーを広く知ってもらうきっかけとなった。「新天地で苦戦している事業者も多いと聞く。きめ細かく下支えする動きが広がれば起業する人も助かるはず」と期待を込める。
被災地で移住の誘致だけでなく定住も順調に進んでいるか。「検証すべき時期に来ている」との声は高まっている。(文中敬称略)