福島のニュース
移住定住の取り組みが加速しているのは東日本大震災、東京電力福島第1原発事故の被災地をはじめとした福島県だけにとどまらない。人口減の難局に対して、全国の自治体は移住者の確保によって地域の維持、再生への活路を見いだそうとしている。総務省がまとめた都道府県の2024(令和6)年度の移住相談件数は合計で43万3810件と過去最多を更新するなど関心は高まり続けている。一方、全国各地で矢継ぎ早に受け入れ施策が打ち出される現状に「移住者の奪い合いが激化している」と感じる自治体関係者は多い。
東京圏への近さなど強みを持つ福島県は2024年度の相談件数が2万505件と長野県に次ぐ全国2位だった。ただ、地域間の競争が過熱する中、存在感を保ち続けられるか―。危機感は被災地だけでなく県内全体に広がっており、違いを打ち出すための模索が続く。
避難指示が出た12市町村のうち、川俣町は「ちょうどいい田舎暮らし」を掲げる。自然の美しさと福島市から30分という利便性を併せ持った地域特性を強みとして打ち出す戦略だ。「新規就農者だけでなく、古民家や空き店舗でカフェ、美容サロン、パン店を営む人など多彩だ」。移住・定住相談支援センターの斎藤悠(28)はさまざまな移住者の受け皿となっている状況を説明する。避難指示区域が設けられた被災地としての一面もある中、復興支援が縁で定住を始める人もいる。
把握を始めた2021年度から昨年度までの移住者数は281人に上る。ただ、道のりは平坦ではなかった。窓口のワンストップ化、体験農園やお試し住宅の開設、住居や働く場の確保など他地域との違いを出すため着手した事業は多岐にわたる。支えたのは国の福島再生加速化交付金だが、昨年度に見直し論が浮上するなど存続は予断を許さない。町政策推進課は被災地で進む少子高齢化などを理由に挙げ、「移住者の獲得は欠かすことのできない施策」として取り組みを強めるための交付金の継続を訴える。
県内自治体の先頭に立つ県の取り組み拡大の必要性も増す。新年度にはふくしま12市町村移住支援センターの機能強化として、東京サテライトオフィスを開設する。首都圏在住者の被災地の認知度向上が目的だが、合わせて他地域と異なる魅力を打ち出せるかも課題となる。
原発事故による風評被害や大勢の県民の避難があった福島県に対して、移住推進への特段の支援を求める声は大きい。復興事業の先細りも懸念される中、県には国と対峙[たいじ]できるかが改めて問われる。県ふくしまぐらし推進課長の中尾麻子は「実情に応じて柔軟に活用できる安定財源の確保などが必要だ」と強調する。
地域おこしや新たな事業に関わる人材、子育て世代が転入するなど被災地で新たな活力の芽が生まれつつある。一方、住居の整備やコミュニティー、仕事づくりなど課題は山積する。帰還者を含め多くの人が住む地域を再生するため、国による検証の徹底と施策の改善が地元から待望されている。(文中敬称略)
=第3部・移住定住は終わります=

