【震災・原発事故15年 復興を問う】NDF廃炉総括監・更田豊志氏 廃炉への関心高める

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【震災・原発事故15年 復興を問う】NDF廃炉総括監・更田豊志氏 廃炉への関心高める

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東日本大震災と東京電力福島第1原発事故の発生から11日で15年となるのを前に、福島民報社のインタビューに答えた原子力損害賠償・廃炉等支援機構(NDF)の更田豊志廃炉総括監は、福島第1原発の廃炉の進捗[しんちょく]や今後の見通しなどについて話し合う対話集会を首都圏で初開催するなど、廃炉への関心を高める取り組みに力を入れる考えを示した。廃炉の「最終的状態(エンドステート)」の設定には全国的な議論が欠かせないと強調した。
―福島第1原発廃炉の現状と課題をどう認識しているか。
「廃炉の定義にもよるが、建屋を壊して片付けるという意味からすると、福島第1原発の廃炉はまだその段階に入っていない。燃料プールにある核燃料の取り出しも1、2号機はこれからだ。3号機は水素爆発で鉄筋がむき出しになっている部分がある。塗装や鉄筋がむき出しの箇所を埋めるなど、保全ができる状態に持ち込むことが重要だ。タービン建屋など、事故後に誰も行ったことがない場所も多くある。これから調査で何が一番不安定なのかを特定していく必要がある。溶融核燃料(デブリ)取り出しの前にもインフラ整備や線量低減など不可欠な作業は山積している」
―東電は2026年度、2号機にロボットアームを投入する。廃炉を進める上での意義は。
「取り出しではなく、調査の意味合いが大きいと考える。アームは狙った場所に手の先を持っていける長所がある。先端部のセンサーからレーザーを放ち、内部の状況を把握できる。点群データと呼ばれ、内部の構造を外部で再現できるのに等しく、センサーを原子炉格納容器内部に入れられることは大きな意義がある」
―3号機の本格的取り出しに向けた工法の検討状況を教えてほしい。
「取り出しの工法実現に至るまでの過程が予想以上に困難であることが分かってきた。炉心で砕いたデブリを下に動かし、横アクセスで取る工法なので、少なくとも3号機の1階の線量を下げることが大事だ。大きな塊のデブリを砕く際にちりをまき散らさず、現場で細かくできるような民間の破砕技術を使えるかどうかを確認している」
―放射性廃棄物の管理方法を巡る議論をどう見るか。
「非常に強い放射線を出す廃棄物の管理には、金属製の容器に入れるなどの対応が必要になるため、元の容積の数倍にもなる。原発敷地内で全ての廃棄物を保管できる保証はない。廃棄物の管理ができないために廃炉が進まないというのでは困る。『抱え切れる』との判断がつかない場合、原発敷地外での一時保管に向けた議論をどこかで始めるべきだ」
―長期にわたる廃炉作業は継続的な人材確保が重要だ。
「廃炉作業の長期的な見通しがないと、民間の参入、投資に結びつかない。東電の事故を起こした責任と、廃炉作業をやり遂げる責任に関する社会的な整理も必要だ。次の世代に使命感とやりがいを持って取り組める職場にしていく必要がある。構内で働く人の環境や待遇を改善するのも非常に重要だ」
―原発事故の発生から15年となる。廃炉への社会の関心を高める方策はあるか。
「これまで県内が中心だったNDF主催の対話集会を、9月に東京都内で初めて開く予定だ。今後の廃炉計画の議論は政府や東電だけではなく、電力消費地であった首都圏をはじめとする全国的な問題と言える。放射性廃棄物の処分に関する話もあるため、全国各地でやりたいのが本音だ」
―廃炉のエンドステートをどう考えるか。
「それこそ全国的な議論だ。更地にして廃棄物も何もない状態にすると言っても、実現するためには、どこかに廃棄物を引き受ける場所が必要になる。その議論に対して、福島だけの問題にして他が逃げ切るのは無責任だろう。一つの省庁で判断できるような話ではなく、政府のトップの判断がいずれ迫られるのではないか」
茨城県出身。東京工業大大学院理工学研究科修了。1987(昭和62)年、日本原子力研究所(現日本原子力研究開発機構)入所。2012(平成24)年9月に原子力規制委員会委員となり、2017年から2022(令和4)年まで委員長を務めた。昨年3月から現職。NDFのデブリ取り出し工法評価小委員長も担う。68歳。