【復興検証 震災・原発事故15年】第6部 風評・風化❻ 処理水で公認白紙に 海外に「安全性」届かず

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南相馬市原町区にある北泉海岸。今秋には5年ぶりとなる全日本サーフィン選手権大会の開催が決まるなど復興に向けた歩みが進む。かつてのにぎわいが着実に戻りつつある「聖地」だが、東京電力福島第1原発の処理水の海洋放出による風評が影を落としている現状がある。県サーフィン連盟理事長の室原真二(57)は「本県海岸に対する海外選手の不安は、いまだに根強い。安全性を訴え続ける必要がある」と現状を明かす。同連盟によると、2023(令和5)年に同海岸を会場に開始したイベント「KITAIZUMISURFFESTIVAL」は、世界最高峰のプロ大会を運営する国際団体・世界サーフリーグ(WSL)の公認を得る予定だった。実行委員会代表を務める室原らも期待に沸いたが、同年8月の処理水の海洋放出開始により、計画は白紙になったという。その後もWSLに働きかけている上、経済産業省も安全性の説明に取り組んでいるとするが、「選手の安全性が確保されているのか明確でない」などの理由を告げられている。同海岸での検査で放射性物質トリチウムの濃度は検出下限値未満となっている。それだけに、海外での潜在的な風評を実感する地元関係者は少なくない。世界最悪レベルの原子力災害である福島第1原発事故の風評は海外にも及び、深刻な影響は貿易や観光などに広がった。国は放射線量の低減や食品の検査の実態をインターネットなどのさまざまな媒体、国際会議などの機会を通して広く伝えており、各国の県産品などの輸入規制解除を実績に挙げる。処理水の海洋放出については昨年8月の関係閣僚会議では「大きな風評が生じているとの声は聞かれていない」などと総括した。ただ、WSLの公認見送りのように、処理水の放出など廃炉の進ちょくに伴って状況が変わる本県への国際的な理解が不十分な点は否めない。国の対策に目新しさがなくなりつつあるのに対し、危機感を抱く自治体や観光関係者からは「本県のイメージが更新されていない。今も風評が根強い国や地域があるとの認識で取り組みを強めるべきだ」と手法を見直しての対応が必要との声も上がる。室原も国に対して「全世界の誰が見ても分かるような情報発信をしてほしい」と切実だ。海外で本県への風評が残ることを示すデータとされるのがインバウンド(訪日客)で、原発事故発生前と比べた外国人延べ宿泊者数の伸び率について全国は5・3倍となっているのに対し、県内は3・3倍と大きく後れを取る。浜通りだけでなく、会津でも誘客に力を入れる自治体が多い中、「国の支援策を使う際のハードルが年々上がっている」との戸惑いも聞かれる。猪苗代町は国の特別交付税を財源とし、外国人誘客や観光で町内を訪れるバスの運行費の補助などに取り組んでいる。ただ、使い道は既存事業の継続に限定している。理由として新規事業には「使えない」と関係省庁から告げられたためという。現状に合わせた戦略的な事業展開に支障が生じているとして、商工観光課長の小板橋敏弘は「補助金はありがたい。だが、柔軟に活用できるような配慮が必要だ」と変化する課題に対応できるような支えが必要とした。(文中敬称略)