【復興検証 震災・原発事故15年】第6部 風評・風化❼ 削られる語り部資金 重要施策位置付けを

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東日本大震災と東京電力福島第1原発事故を後世に伝え風化を防ぐ語り部団体に、資金確保の課題が突き付けられている。「国や自治体からの助成金や補助金が、いつなくなるか分からない」。富岡町のNPO法人「富岡町3・11を語る会」代表の青木淑子(78)は不安を口にする。国は関連予算を削る方針を示している。各語り部団体が活用してきた「心の復興事業」の助成金は2026(令和8)年度、本県以外の被災地には交付しない方向だ。削減の動きが県内にもいずれ、押し寄せるかもしれない。語る会は県や町の助成金を活動資金の中心としている。口演やガイドツアーの料金、個人や団体からの賛助会費も得ており、現時点で活動が滞るような支障はない。ただ、青木は行政の支援が届きにくくなる事態を懸念する。語る会のように将来の財源を不安視する団体は少なくない。震災の伝承活動や次世代の人材育成に取り組む「3・11メモリアルネットワーク」(宮城県石巻市)が2024年に被災3県の28団体に実施した調査では、語り部活動継続への公的な資金支援について、約6割が「不十分」または「どちらかというと不十分」と回答。10年後の見通しでは、「見通しがついていない」または「分からない」と答えたのは25団体と約9割だった。資金の不安定化は、人員確保を難しくさせる。語る会の年間の口演回数は150回超で、町内を巡るツアーの参加者や口演の聴講者は年間約1万2千人超に上る。現在20人が語り部として登録しているが、高齢化や遠方に居住していることから、動ける人は限られている。若者が加入しても仕事との両立に悩み、定着しないケースもある。青木はどう人繰りをするか頭を悩ます。「もっと収入にも結び付く形になれば定着にもつながるのでは…」と打ち明ける。震災発生から時間が経過するのに伴い、複合災害を経験していない世代の増加が進む。新たな人材を今後どのように確保していくかが課題となる。県内の語り部団体でつくる県の「東日本大震災・原子力災害ふくしま語り部ネットワーク会議」は2023年度から育成講座を開始し、今年度までに約40人が受講を修了した。受講後は県内の語り部団体に必ず所属する仕組みで、担い手確保のための体制は少しずつ整備されつつある。青木は「原子力災害はまだ終わっていない。これからの未来を担う若者も一緒になって考えていかなければならない」と力を込める。3・11メモリアルネットワーク代表理事の武田真一(67)は「震災の教訓を防災や実際の避難行動につなげていくには、市民一人一人の意識と行動の変化が必要」だと強調する。このためには、語り部が住民に語りかける伝承を続ける基盤が大切と指摘している。「15年が経過したからこそ、語り部の重要性は増している。政府や自治体が重要な施策や事業の一つとして位置付けていくべきだ」として、支援体制強化の必要性を訴えている。(文中敬称略)