福島のニュース
県営住宅の老朽化が課題となる中、県は希少性の高い福島市の県営野田町団地の保存・活用に乗り出す。「スターハウス」と呼ばれる昭和の時代を象徴した特殊な建物で現存例が極めて少ないことから、居住機能を残したまま国の有形文化財への登録を目指す。改修に当たり、移住の促進や子育て支援などに向けた新たな機能を持たせることを想定。管理・運営の在り方も含めて検討し、公営団地の再生モデルとする方針だ。県建築住宅課によると、1959(昭和34)年に建設された野田町団地は、スターハウスの中でも最初期の型に分類され、国内でも同団地の2棟を含めて3棟だけという。正方形の住戸を三つ組み合わせた構造や水平の連続窓などが特徴の鉄筋コンクリート造り4階の建物は大規模な改修が行われておらず、昭和の設計思想が垣間見える極めて貴重な歴史的建造物として再評価された。入居者の新規募集を停止していたが保存活用の方針となった。方向性を決めるに当たり、新年度に県や設計に当たる民間事業者、有識者らでつくる連携会議を発足させる。貴重な構造を残した上での耐震補強や内部リフォームなど整備面で協議を重ねる。県営だけでなく民間事業者の活用も含めた運営の在り方も検討。居住だけでなく店舗利用も含め昭和レトロの特徴を生かしたさまざまな用途での活用を見据えており、移住・定住促進や子育て世帯の支援、観光活性化や建築業の担い手確保に役立てることも想定している。2027(令和9)年度から2年間で改修工事を終え、2029年度の供用開始を目指す。団地には現在、24戸のうち10戸に住民が入居しており、意向を尊重しながら保存・活用する。復興公営住宅を除く県営住宅は約480棟あるが、このうち2割の約100棟が建設から半世紀以上が経過し老朽化と入居者の高齢化が課題となっている。解体費の増加も懸念される中、県は野田町団地を成功事例とし、他の団地の再生にもつなげたい考えだ。全国でも昭和に建てられた公営住宅を保存・活用する動きが広がりつつある。東京都ではスターハウスが文化財に登録。長崎県や兵庫県では再生した団地が観光誘客や地域活性化に貢献している。東京工芸大の海老沢模奈人教授は、日本の集合住宅の歴史から見た野田町団地の貴重さを評価。住みながらの保存も画期的な取り組みとした上で「地方創生の観点からも大変重要。同団地が出発点となり、輪が広がるよう望む」と期待を込めた。

