福島のニュース
海外の人工透析患者が団体旅行で県内観光を楽しむ―。そんな医療ツーリズムが今夏、始まる。福島市の済生会福島総合病院は7月下旬、団体での透析患者を受け入れる。患者情報の事前提供を受けて準備を整え、旅程と透析治療の両立を支える。県腎臓病協議会によると、訪日外国人の透析が可能な病院は県内にあるが団体は初めて。観光業に加え、宿泊業にも波及効果が期待される。血液の老廃物などを取り除く人工透析が必要な慢性腎臓病の主な原因は糖尿病や高血圧、慢性腎炎。一般的に透析は2日に1回程度必要で、1回当たり4時間程度かかる。旅先に治療環境が整っていなければ、数日以上の泊まりがけの旅行は難しい。とりわけ団体旅行は、他の参加者に迷惑をかけないようにとハードルがさらに高くなる。同病院は国内旅行を楽しむ透析患者を受け入れ、患者が韓国に渡る際には医療情報を提供した実績がある。対象を外国人に広げれば、本県の自然や食などの魅力を楽しむ機会をつくれる。海外からの医療ツーリズムを受け入れるため昨年、透析担当医を1人から2人に増やし体制を整えた。7月の第1弾は台湾からの患者11人。福島空港を利用する3泊4日の旅程で、半日を同病院での透析に充て、残りは本県、宮城、山形の南東北3県を巡る。患者の家族らを含めると20~30人での来県となるという。台湾の旅行会社が企画・実施するツアーの一環で、宿泊先の手配や通訳の添乗、台湾の病院からの患者情報提供などを旅行会社が担う。台湾側から打診を受け、団体旅行の受け入れを決めた。1回の透析費用は1人当たり約5万円を想定。一般的な富裕層向けの訪日透析よりは、価格帯を低く抑えたという。1回当たりの団体受け入れの上限は10人程度。福島空港離発着に限らず、羽田・成田・仙台など県外空港を利用する人も対象とする。継続的に受け入れる方針で、日程や対応可能な透析ベッド数などを状況に応じて調整する。星野豊院長は「透析を受けて不安を和らげ、本県を含め東北の自然や文化、人の温かさを味わってほしい」と話す。透析患者らでつくる県腎臓病協議会の長谷川勇三副会長(いわき市)は「定期的に透析を受けなければならない患者にとって宿泊旅行は大変で、海外旅行は夢物語だ。今回の事例のように県内で団体外国人の透析患者を迎えられる体制ができるのは画期的だ」と歓迎している。透析患者の国内外への旅を支える一般社団法人旅行透析(沖縄県宮古島市)の池間真吾代表理事によると、海外からの団体旅行の患者を国内で受け入れる病院は限られている。言葉の壁や在住国での血液検査など病院側と患者側の双方で準備が必要になるためだ。済生会福島総合病院のような団体受け入れが定着すれば、海外から日本各地へ足を運ぶきっかけになると期待する。

