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2024(令和6)年の全焼火災から再建を果たした相馬市の造船所・松川造船で、事業再開後初の造船となった漁船「宝精丸」の進水式は30日、市内尾浜で行われた。東日本大震災と東京電力福島第1原発事故発生後の松川浦地区の漁業再生を支えてきた造船所の再起を象徴する船出を関係者や地域住民が祝った。松川造船は市内で唯一の造船所。地元の漁船の修理や建造を担っていたが、2024年2月の火災で造船工場など主要施設が全焼。一時は事業継続が危ぶまれた。その後、国や県、漁業者らの支援を受けて再建が進み、昨年4月に復旧した。宝精丸は再建後の工場で約7カ月かけて建造された全長約30メートルの底引き漁船。松川造船が自社設計した船体で、高波でも安定して航行できるのが特徴という。式典ではレールに乗った船が海へと慎重に送り出された。大漁旗をなびかせ湾内を進む姿に、岸壁から大きな拍手が送られた。松川造船の早川宗延社長(74)は火事直後は「官民の多くの支えがあって復活できた。これからも良い船をつくり、福島県漁業の復興を下支えしていきたい」と決意を新たにした。津波で母亡くし、火災乗り越え…船主佐藤さん万感「船速も速く、良い仕事ができそうだ」。宝精丸の船主佐藤泰弘さん(35)は特別な思いを胸に心待ちにした船に乗り込んだ。震災の津波で母けい子さん=当時(51)=を亡くし、2012(平成24)年に消防士から転身して家業の漁業を継いだ。相馬双葉漁協の組合長を務めた父弘行さん=当時(61)=も2017年に急逝して以降、船主として乗組員とともに海と向き合ってきた。地元漁業にさらに貢献しようと、新船を松川造船で建造していたところに火災に見舞われた。完成は1年以上延びたが、「時間はかかっても松川造船が手がけた船に乗りたかった。素晴らしい出来栄え」と待望の愛船を前に目を細めた。宝精丸には取った魚介類の鮮度を保つ紫外線殺菌装置を地域の漁船で初めて搭載した。メヒカリやスルメイカの底引き網漁が本格化する5月から航行を開始する予定。佐藤さんは「消費者に安心して食べてもらえる、おいしい魚を取っていきたい」と復興が進む海原に目を向け、思いを語った。

