福島のニュース
福島県双葉町細谷地区の住民有志らは31日、東京電力福島第1原発事故発生前に地区内に育っていた約3千個のヒガンバナの球根を、町内中野にある東日本大震災慰霊碑周辺に植栽した。未曽有の災害により一時、町を離れたヒガンバナが古里に戻った。今秋に見頃を迎える予定で、住民は「ずっとここで咲き続けてほしい」と願う。ヒガンバナは太平洋戦争末期、地区に神奈川県横須賀市から疎開してきた医者家族が住んでいた屋敷の裏山に植えたとされる。2009(平成21)年、当時行政区長を務めていた大橋庸一さん(84)=同県いわき市に避難=が地域の環境美化の一環で、裏山から地区内の町道脇に移植。その後は毎年きれいな花を咲かせていたが、原発事故により状況は一変した。細谷地区は原発事故に伴う除染で出た土を保管する中間貯蔵施設となり、気軽に見られる環境が失われた。住民らはヒガンバナの美しい風景を後世に残そうと、環境省などの協力を得て2018年に同県川俣町山木屋地区に植え替えた。大橋さんらは今回、在りし日の古里の風景を伝えるため、川俣町から球根の一部を持ち込んだ。大橋さんは「ヒガンバナを双葉に里帰りさせたい思いがずっとあった。実現できてほっとした」と感慨深げだった。

