福島のニュース
東京電力福島第1原発事故に伴う避難を経て福島県浪江町から二本松市に移転した食堂「杉乃家」が3月31日、50年の歴史に幕を下ろした。最終営業日にも県内外から多くのファンが詰めかけ、香ばしい香りと別れを惜しむ思いが広がった。午前11時の開店前から行列ができた。豚肉とシャキシャキのもやしが入った太めんの焼きそばは、県内食材にこだわり抜いた逸品だ。店内は中華鍋を振る音に、語らいと「ありがとう」の声が幾重にも重なった。浪江町出身で開店当初から通う二本松市在住の原田雄一さん(76)は、杉乃家は震災で離れ離れになった住民をつなぎとめた存在だったと語り、「寂しい気持ちもあるが、ご苦労さまと伝えたい」と感謝した。閉店後、最後まで店に残った常連客に大きな拍手で見守られながら、店主の芹川輝男さん(74)は涙を流し、のれんを下ろした。「50年間、無我夢中で駆け抜けてきた」としみじみ振り返った。閉店は1月中旬、妻の春子さん(74)の体調を考えて決断。公表後に訪れる客の多さに、支えられてきた重みを実感したという。震災発生後も地域とともに歩み、息子の勇慈さん(54)と鍋を分担しながら味を守り抜いた。のれんを下ろしても、ぬくもりに満ちた味わいは訪れた人々の記憶に残り続ける。【写真】涙ながらに杉乃家ののれんを下ろす輝男さんら

